Medical

認知症外来

患者様へ

私たちは患者様に安心安全な医療提供を心掛けております。そのため、対話を重視し、認知症専門医として十分な医療知識を提供し、理解していただいたうえで、ご自身で治療選択をし、納得感のある治療を受けていただきたいと思っております。

認知症外来について

一般的にものわすれに関する病気について専門的に診断、
治療する外来です。

問診、採血、神経学的検査、各種神経心理学的検査、MRI、SPECTを合わせて、早期発見や正確な診断を心掛けております。
診断を経てから、疾患の特徴や予後、治療方針など改めてご説明させていただきます。

代表的な症状・疾患

軽度認知機能障害(MCI)

軽度認知障害は認知症の一歩手前の状態で、MCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれます。認知症における物忘れのような記憶障害が出るものの症状はまだ軽く、正常な状態と認知症の中間と言えます。

この段階で発見し、認知症への進行を未然に防ぐことも重要と言われております。少しでも認知機能が気になる点がございましたら、気軽にご相談してください。 続きを読む
アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは、脳の中にアミロイドβという蛋白質が溜まり、正常な脳の神経細胞を壊して脳を萎縮させる緩徐進行型の病気です。脳の萎縮は徐々に進行します。短期記憶を司る海馬にも起こると、体験したこと自体を忘れてしまう記憶障害が起こります。記憶障害が起こると、新しいことを覚えられなくなります。また、見当識障害と言われる年月日や時間、季節などの感覚が薄れていきます。さらに進むと、今自分がどこにいるのか、人物が分からなくなります。その他、理解力や判断力が低下していきます。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、アルツハイマー型認知症に比べ男性の割合が高く、女性の2倍近くの有病率が報告されています。 小さな脳梗塞を中心とする脳血管障害発生により引き起こされるため、脳梗塞を起こすたびに階段状に進行していきます。若い世代の発症も見られ、この場合「高次脳機能障害」と診断されることもあります。

高次脳機能障害は機能回復への見込みが高く、脳血管性認知症は機能低下が徐々に継続していく違いがあるとされていますが、ほぼ同じ症状が出現します。 続きを読む
レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症に次いで多い認知症で、約20%を占めています。アルツハイマー型が女性の発症率が高いのに比べ、レビー小体型は男性の方が多く、女性の約2倍と言われています。 レビー小体とは、神経細胞に出来る特殊なたんぱく質です。レビー小体型認知症では、レビー小体が脳の大脳皮質(人がものを考える時の中枢的な役割を持っている場所)や、脳幹(呼吸や血液の循環に携わる人が生きる上で重要な場所)にたくさん集まります。レビー小体がたくさん集まっている場所では、神経細胞が壊れて減少している為、神経を上手く伝えられなくなり、認知症の症状が起こります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって、様々な症状が引き起こされる病気です。他の認知症と違い、指定難病に認定されています。 前頭葉と側頭葉は脳の4割を占める重要な器官。前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするため、人格や理性的な行動、社会性に大きく関ります。一方側頭葉は、言葉の理解、聴覚、味覚のほか、記憶や感情をつかさどります。どちらも大変重要な働きを担っているので、機能低下による影響は甚大です。

前頭側頭型認知症の初期には物忘れや失語はあまりみられず、人格の変化や非常識な行動などが目立ちます。そのため、精神疾患と診断されてしまう場合があるので、鑑別診断が重要となってきます。 10年前後で寝たきり状態になると言われており、筋萎縮や筋力低下がある場合は、その進行がさらに早いとされています。 続きを読む

検査

問診

物忘れをご自身やご家族が感じる状況を詳細に聞いていきます。問診により脳のどこの部位が萎縮や障害されているのか判断していきます。また、そもそも認知症なのか違う病気なのかという判断もしていきます。 さらに、認知機能低下に伴う生活上の困りごとに対し、環境調整の提案や介護保険を利用したサービスにより生活を支える仕組みを提案します。

採血

生活習慣病をはじめとする認知症に影響を与える因子を精査します。また、内臓の疾患により認知症を発症している可能性があり、治療できる認知症を除外します。

神経学的検査

神経学的検査とは脳の障害を体の症状から特定していく検査になります。直接体に触れ、反射や運動などを評価し、脳のどこに障害を受けているのか推定してきます。

各種神経心理学的検査

HDS-R、MMSE、かなひろい、DASKなどを用い、認知症のスクリーニングや認知症の分類を推定します。

MRI

磁力を利用し脳の断面を画像化することで、構造を可視化し、脳の萎縮の程度、脳梗塞などを特定します。また、アルツハイマー型認知症に特徴的な海馬の萎縮の程度を判定します。

血液検査

内臓疾患からの認知症の可能性や認知症のリスク因子を調べるための検査をします。

SPECT

放射線物質を利用し、脳の血流の分布を特定し、認知症を分類していきます。

治験

治療は必ずしも薬物療法だけではありません。薬物療法と介護サービスなどの非薬物療法は同等の効果があると言われております。薬物療法だけでなく非薬物療法も組み合わせて治療に取り組んでいきましょう。

アルツハイマー型認知症により失われた記憶や機能を回復させ、病気を完全に治すお薬はまだありません。 症状の進行を遅らせるお薬、不安、妄想、不眠などの症状を抑えるためのお薬による治療が中心となります。 進行を遅らせることでご家族と一緒に過ごす時間を長くすることができ、またご家族、介護者の負担を軽くすることにもつながります。

薬物療法

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
アセチルコリンとは、脳内では記憶保持や集中、覚醒などの作用がある神経伝達物質です。 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアセチルコリンの分解を抑制し、脳内の相対的濃度を高めることで、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の中核症状の進行を抑制するとされています。 主にアルツハイマー型認知症の軽度~中等度の段階を中心に幅広く服用されています。 一方で、アセチルコリンは全身に幅広く作用する神経伝達物質なので、特に薬物が最初に吸収される消化器に作用し、副作用として吐き気や下痢、食欲不振があらわれることがあります。 運動器ではふらつきなどの歩行障害がみられています。 また、精神的な副作用として攻撃性の増加や興奮があり、暴言や暴力などにつながることがあるため、注意が必要です。 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬として現在日本で認可されているのはドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンで、全て同じ作用の薬物です。 消化器の副作用が出やすい場合には、シールのように皮膚に貼りつけて吸収させるリバスチグミンのパッチ剤を用いるなど使い分けることがありますが、パッチ剤と経口剤を併用することはありません。
NMDA受容体拮抗剤
グルタミン酸は脳内の興奮性の神経伝達物質です。NMDA受容体拮抗剤がグルタミン酸の作用を弱めることで、過剰な興奮による脳神経の損傷を抑え、中核症状の進行を抑制するといわれています。 比較的重度の認知症にも用いられ、興奮を抑制する作用もあることから、行動・心理症状の興奮や暴言・暴力などの攻撃性に対する効果も期待されています。 現在日本ではメマンチンが認可されています。副作用としては主にめまいや眠気が報告されています。 NMDA受容体拮抗剤とアセチルコリンエステラーゼ阻害剤とは効果をもたらすしくみが異なるため、これらが併用されることもあります。
その他の薬物療法
脳血管性認知症においては、生活習慣病を背景として発症していることが多く、高血圧、脂質異常症、糖尿病のコントロールが重要といえます。進行させないよう内服コントロールをそれぞれに対し行っていきます。 また、MRIで頭蓋内血管の狭窄や頸動脈の狭窄が認められる場合は、抗血小板薬や脂質異常症の内服薬を投与することで頭蓋内の血流が改善する報告もあり、組み合わせて治療することがあります。
非薬物療法
薬物療法と同等の効果があるともいわれており、重要です。 デイサービス、リハビリテーションを利用して、会話や運動を通じ、できる機能や残っている機能を維持します。 認知症初期では介護サービスを利用していないことも多く、介護保険の申請から介護サービスの導入の相談も丁寧に対応させていただきます。